キッチンカー・フードトラック(移動販売車)はどんな種類があるの?営業スタイルに合った商品選びとは
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ニーズが急増しているのがドライブスルーを含めたテイクアウト・持ち帰りによる飲食店営業です。飲食スペースを外出しすることで、店舗側にとっては店内感染対策に大きなコストをかける必要がなくなり、顧客側にとっては密集した店内で飲食することによる感染リスクを減らせることができます。
テイクアウト型の飲食店経営を行うにあたって注目度が増しているのがキッチンカー やフードトラックなどを含んだ移動販売車。withコロナ期の飲食店営業に適した移動販売車について、その魅力と営業の仕方について紹介していきます。
今回は移動販売車による飲食店営業が可能な場所についてご案内します。
移動販売車のとはなに?(法的扱いについて)
建築物であるか建築物でないか
日本における飲食店のほとんどはビル・マンションの一区画や幹線道路沿いにある建物といった「建築物」にて営業されています。「建築物」とは建築基準法によって規定されており、土地に固着して簡単に動かせないもので営業している飲食店は基本的に「建築物」による営業と考えて良いでしょう。
一方で移動販売(車)とはなにかといえば、簡潔に表現すると、「建築物」ではない飲食店営業と表せます。建築基準法における「建築物」の規定には合致しないものの、飲食店営業に必要な食品衛生法の「営業許可」の要件を満たしているものの総称が移動販売(車)です。
移動販売車に明確な定義はない
移動販売車は営業許可上は「建築物」ではないということをご紹介しましたが、移動販売車とはなにかについては明確な定義はありません。そのため呼称についても多々存在しており、移動販売車以外にも、「キッチンカー 」「フードトラック」「キッチントレーラー」などの表現がしばしば使われています。これらいずれも法律上の定義はなく、それぞれの事業者が便宜的に用いているに過ぎません。移動販売車を用いた飲食店営業を検討されている方は、こうした点をまずは頭に入れておくと良いと思います。
屋台は臨時営業でしかない
「建築物」ではない飲食店営業で思い浮かぶ形態として、お祭りやイベント等でよく見られる屋台があります。屋台などの屋外(壁と天井で囲われていない)での飲食調理・販売については、国内において継続的な営業は認められておらず、「臨時営業」といって期間を定めた一時的な営業許可しか取得できないのが現状です。「建築物」ではないもので継続的に飲食店営業を行う場合は、一般的な屋台での営業は残念ながら検討できないので、移動販売車で許可を取ることが一般的になります。
移動販売車には自走するものとそうでないもの2種類が存在
移動販売車での飲食店営業を行う時にポイントとなることは、移動販売車のデザインですね。デザインは営業戦略上とても大切です。お客さんをたくさん集めるためにおしゃれで目立ったものが良いといった外装はもちろんですが、調理場の広さや設備といった内装も取り扱う飲食物に合わせて考える必要があります。近年は移動販売車のニーズ増加に応じてその種類も増えてきましたので、自分の営業スタイルに合った商品を選ぶことが可能になっています。移動販売車選びでまず考えなければならないことはそれが自走するものなのかどうかです。「建築物」でないため、簡易に移動できることが移動販売車のメリットですが、その移動頻度については営業スタイルによって変わります。毎日のように移動する営業の仕方もあれば一定期間は同じ場所で営業することも考えられます。
高頻度での移動が必要な営業スタイル(自走する移動販売車)
高頻度で移動する場合は自走することが原則
毎日のように移動が必要な営業スタイルの場合は、基本的には自走する移動販売車を使う必要があります。例えば都市部の公開空地や広場など、夜間の停留ができない場所での営業の場合は毎日保管場所と行き来する必要がありますので、自走する移動販売車を選ぶことになります。
自動車を改造したものが一般的
自走する移動販売車は、それ自体に動力がついており、単独で自由に動き回れることが特徴です。一般的には、軽トラックや大型のバンなどの自動車を改造したものが挙げられます。逆に言うと、飲食店営業に特化した自動車というものはメーカーからは販売されておらず、専門業者などが既存自動車を改造した二次車両を使うことが原則となります。もしかしたら今後もニーズが高まり続ければ、飲食店営業に特化した自動車がメーカーから販売される時が来ることもあるかもしれませんね。
公道の移動をする場合は車検取得が必須
移動販売車を移動する際には公道を走行することが前提となりますが、その場合は一般的な自動車と同様に道路交通法に基づき車検(ナンバー)を取得する必要があります。ただ、上記の通り現在国内で取り扱われている自走する移動販売車は既存の自動車をベースに改造されてもののため改造業者で車検取得に必要な要件を満たしていることがほとんどです。車検取得が可能かどうかは念のため各業者に問い合わせてみることがよいでしょう。納品時に既に車検を取得しているか、自分で手続きが必要かもポイントになります。
自走しない移動販売車でも場合によっては対応可能
高頻度の移動が必要な営業では自走することが原則と記載しましたが、自走しないものでも営業が可能な場合もあります。それはトラック等で牽引して移動させるものになります。キャンピングカーなどでしばしば見られますが、ヒッチメンバーと呼ばれる接続器を有している被牽引車として製造されている移動販売車です。ただ、被牽引車も公道を走行する以上は道路交通法に基づいて車検を取得することが前提となりますので注意しましょう。
モビリティ性(移動性)が高いことがメリット
上記の通り自走する、もしくは被牽引車の場合は当たり前のことですが移動が簡易に行えることが一番のメリットです。毎日同じ場所でなくとも、周遊しながらの営業も物理的には可能ですので、旅をしながら営業するなどの夢も広がりますね。
調理場が狭いことがデメリット
自走する移動販売車は公道を走行するということで車検が通るような設計がなされています。そのため、飲食店営業に直接関係する調理場の面積は非常に狭くなることがデメリットです。広さや構造的に本格的な厨房機器を設置することができないため、取り扱える商品もある程度限られてしまいます。
車検取得に係る費用が発生します
車検取得する移動販売車の場合は当たり前ですが、車検を通すためのメンテナンスを常に行う必要があり、またその手続きの費用も発生します。つまり移動販売車の維持管理コストが必要になる点に注意しなければなりません。
低頻度での移動を想定した営業スタイル(自走しない移動販売車)
自走しない移動販売車での営業が可能
夜間の停留が可能な場所での営業スタイルの場合は、その場に止まって営業することが多いと思います。例えば、営業する敷地を自己所有している場合や、借地して営業する場合などが該当します。この場合は自走しない移動販売車での営業が適しています。ただ、移動頻度が低いからといって土地に固着するようになると建築基準法に基づく「建築物」とみなされてしまうので注意が必要です。
移動する際はユニック車や積載車での運搬を前提
自走しない移動販売車の場合、サイズや構造上の理由から車検を取ることができないことが多いです。一方で「建築物」とならないために随意で移動が可能なことを前提としなければなりません。その際の移動手段としては、ユニック車や積載車といったトラックに載せて荷物として運搬してもらうことが最も経済的です。自分たちでこうした車両を所有していなくても、運送会社に依頼して数万円程度で移動できるので、移動頻度が少ない場合はこうした方法で移動させることが良いでしょう。
法律に縛られない自由なデザインがメリット
自走しない移動販売車で車検を取得しない場合、サイズや構造などのデザインに対する規制がかからないため、おしゃれな外装デザインを有していることや、動力がない分調理場を広く設計されていることがメリットです。本格的な厨房機器を導入し、「建築物」と同等のレベルでの飲食物提供が可能になります。
維持管理コストが安い
自走する移動販売車と逆で、車検を取得する必要がないため、定期的な申請手数料などはかかりません。維持費が軽いことは飲食店営業では重要な経営ポイントになりますね。
営業スタイルに合わせた移動販売車選びで飲食店経営を加速させよう
新型コロナウイルス感染拡大を契機に注目度が増している移動販売車での飲食店営業ですが、近年移動販売車の種類が増加しております。大きく分けると自走する移動販売車と自走しない移動販売車が存在し、今回はそれらのメリット、デメリットについて紹介しました。移動頻度を中心とした営業スタイルに合わせた最適な商品選びで、あなたの飲食店経営をより良いものにしていきましょう。